現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
本が好きなグレースにとって天職とも思われる仕事だったが、職員の数が少ないので空きが出るまで補充の募集はしないのだという。とは言え数年待てばどうにかなるだろう、と待っていたら五年も経ってしまった。

しかもやっと巡り合えたチャンスに手を挙げたら、今度は『経験値』が必要だという。
それを聞いて以来グレースは気持ちが沈んでいくのが抑えられなくて、ヴェネディクトが領地から帰って来て話を聞いてくれるのを心待ちにして耐えていたのだ。

なのに今日はお茶会の招待状をもらえなかったらしい継母にひどく八つ当たりされてしまって、久しぶりに気持ちが立て直せないほどだったのだ。さっきヴェネディクトが来てくれるその瞬間まで涙を堪えていたのは秘密だ。

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