現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない

どれだけ身長が伸びても、社交界で令嬢達にモテても、事業で成功しても、名門貴族の跡継ぎになっても。ヴェネディクトはヴェネディクトなのだ。ずっと変わらない、グレースにとって家族よりも安心出来る大切な人。

だからグレースの答えは決まっている。

「もちろん許すわ、ヴェネディクト。確かにとても驚いているけれど、傷つけられたわけじゃないし、私を傷つけようとも思ってなかったでしょ？でもね、結婚の話は少し待って。ヴェネディクトはとても大切な人だし、貴方が他の令嬢を褒めるのも仲良くするのも気分が良くないけれど、この気持ちが恋なのかまだ分からないの。だってそうじゃないってずっと強く思い込んできたんだもの」

そう、思い込んできたのだ。自然とそう考えたんじゃなく、「幼馴染」だ「弟」だと自分に言い聞かせてきた。
だからまだ分からない。ヴェネディクトを手放したくないと思うこの気持ちが愛なのか執着なのか。それを確かめる時間を欲しいと、確かめさせて欲しいと思う。