現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
「お父様……」

グレースが結婚に希望も興味も持っていないのを父が理解していたのも、それを密かに喜んでいたのも初めて知った。
娘に嫁入り先がないのを喜ぶなんて褒められた事ではないだろうけれど、そこに確かな愛情を感じてグレースの胸はじんわりと温かくなった。

考えてみれば父の再婚から十年、昔のように父娘二人っきりで話す事はほとんどなかった。きっとその分、互いの距離も離れてしまっていたのだろう。

「でも、良かったよ。ヴェネディクトなら良い青年だ。昔からお前の事をよく知っているし、お前も心を許して甘える事が出来るだろう。本当に良かったよ」

「お父様……あの……」

父からの愛情を確かめられたのは嬉しいが、嘘の婚約話をこんなに喜ばれると心苦しい。しかも父の眦に微かに光るものを見つけてしまったらもう、半端ない罪悪感が込み上げてきて。

「実は」と口にしようとした瞬間、ヴェネディクトにそっと手を握られた。

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