現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
「なんだ、今日は賑やかだな」

部屋の奥から聞こえてきたのはしゃがれた、でもハキハキとした老人の声。

「ええ。手紙でお知らせしたでしょう?今日は僕の婚約者のグレース嬢も一緒ですからね」

何故だか上機嫌なヴェネディクトが歌うように言うとその声も上機嫌に笑った。

「アッハッハ。そうか、とうとう儂はグレース嬢と会えるわけか。ならば儂もお前に劣らぬほど機嫌良くならねばだな」

「別にグランサム公に機嫌の良さなど求めていませんよ。大体、あなたがグレースと会うのに機嫌が良くなる理由がないでしょう?」

「そんな事はないぞ。あれだけ話に聞いた令嬢にようやっと会えるのだ。老人にとっては貴重な刺激的な出来事だろうが」

「刺激なら別のところで受けてくださいよ。あなたが機嫌良過ぎるとロクな事がない」

「ワァッハッハッ。お前のそんな様子が見れるとは実に愉快だ。機嫌が悪くなりようがないぞ、諦めろ」

「全く、減らず口なんだから……」
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