現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
「なるほど。言われてみれば、こちらに来た時は随分と強張った顔だったな。儂に会うので緊張しておるのかと思っておったが、王都での生活が厳しかったのか」

「そうかもしれません……」

王都というより実家が、だろう。そうは思ったがわざわざ我が家の醜聞を晒す事はない。グレースは曖昧に微笑んだ。

ヴェネディクトも楽しげに会話に加わる。

「綺麗になったんじゃなくて、グレースは元々綺麗なんですよ。そういうグランサム公爵こそ、最近は随分と穏やかな顔ですよ?きっと王都の連中が見たら驚きすぎて腰を抜かしますよ」

「それもそうだな」

ダイニングルームに三人の笑い声が響く。

本当にここでの生活は心と体に良い影響を与えている。晩餐の時間にこんな風にみんなの笑い声が響くことなんて実家ではなかった。
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