神志名社長と同居生活はじめました
「……電話、何ですぐに出てくれなかったんですか?」

『……もう話すことなんてないから』

「だったら即切れば良かったじゃないですか」

さっきの社長は、電話に出るべきかどうか悩んでいるように見えた。
私のことは本当にただの遊びだったのなら、あんな風に悩む必要はないはずだ。


……でも、私は社長の言葉を聞きにきたんじゃない。

自分の……


私自身の気持ちをぶつける為に、ここに来たのだ。



「社長のことが……私は好きです」

今まで、はっきりと言えていなかったこの言葉。たった二文字の、何よりも大事な言葉。


「本当に遊びだったのなら、もうそれでもいいです。何か事情があっても、話したくないのなら無理して話してくれなくてもいい。
だけど私はーー


社長のことが好き。ただそれだけなんです」



自分の気持ちを伝えるというのは、とても恥ずかしいし難しいことだ。

だけど、逃げてはいけない。逃げても幸せにはなれない。


逃げたり避けたりしながら無難な幸せを手に入れるより、思い切ってぶつかって、その先にある本当の幸せを手に入れたい。
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