神志名社長と同居生活はじめました
「うん。上手い」

「本当ですか? 良かった」

私の作った食事が社長のお口に合ったようで一安心。
メカジキの煮付け、五目煮、大根のお味噌汁、そして白米。ぱっと見は地味だけれど……栄養は満点だ。


私も、社長が食事をしている丸テーブルを挟んだ正面に腰をおろし、同様に食事をする。
すると。


「本当に勿体無い」

綺麗な箸使いで煮付けを掴みながら、社長が突然そのようなことを言った。


「勿体無い、ですか? 何がですか?」

「こんなに美味しい食事が作れるのに、男にフラれるなんて」


グサッッ! と、昨夜に続き、今日も朝から言葉の槍が私の身体を真正面から貫いた。
何故今それを言う⁉︎ もしかしてこの朝食、実は美味しくなかった⁉︎


泣きそうな気持ちになりかけていると、社長はすぐに「あ。ごめん、間違えた」と言う。


「間違えた……?」

「うん。


ーーこんなに美味しい食事が作れる彼女と別れるなんて、君の彼氏は勿体無いことをしたねって言いたかった」


「……っ」



そ、そういう意味が……。


何だか急に恥ずかしくなり、頬が熱くなる。
悲しくなったり、恥ずかしくなったり、社長といると感情が本当に忙しくなる。


……でも、それが嫌ではない自分がいる。
それに、そのお陰で尚のことを極力考えずに済むし……。


うん。尚に傷付けられたことは、早く忘れたい。
今すぐには無理でも、そう思えただけでもとりあえず、尚のことは良しとしよう。
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