神志名社長と同居生活はじめました
「さて。俺はそろそろ出勤するけど」

食事を終え、私が食器を洗っている間にいつの間にやら身支度を完全に整え終えた社長が言う。


「あっ、分かりました。そう言えば社長、この家までどうやって来られたんですか?」

「会社の近くだったから歩いてきた」

「社長でも、徒歩の移動なさるんですね」

「どういうこと。自分の足では歩かずにいつも他人に車運転させてそうってこと?」

「い、いえ! そういう訳では!」

私は自分の顔の前で両手をぶんぶんと左右に激しく振る。
しまった。悪気はなかったのだけれど、失礼なこと言ってしまったかな。


「なんてね」

私が焦っていることに気付いたのか、社長がそう言ってくれる。
でも、無表情だから果たして本当に怒っていないのか分かり辛い!


「まあそんな訳だし、雅も一緒に出勤する?」

「え⁉︎ い、いえ! 一緒に出勤するのは、少々、いやかなり問題があると言いますか!」

「問題? 何かある?」


いや、問題しかないです!

と、はっきりツッコみたいけれど、相手が社長だからそれも出来ず。


薄々感じていたけれど、社長って細かいこと気にしない人だよなぁ。社長以外の人からしたら、全然細かくもないのだけれど!



「そ、それに、私はもう少し後に家を出ても間に合いますし、身支度もこれからですので……」

「ああ、そうか。じゃあ先に出るね」


あっさりと理解してくれて良かった。
けれど、安堵したのも束の間。


「じゃあ、ほら」

「何ですか?」

靴を履く社長をお見送りしようと玄関に来たところで、社長からそんなことを言われる。


「いってらっしゃいのキスは?」

「っ、え⁉︎」
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