神志名社長と同居生活はじめました
「雅? もっとリラックスしなよ」

そんな私の様子を見て、社長がちょっと呆れたような声色でそう言ってくる。


お言葉に甘えて、伸ばしていた背筋を少しだけ丸め、背もたれを使わせていただく。

うちの実家にある、私の軽自動車とは乗り心地が全然違う。いや、比べるのもおこがましいけれど。


「ところで、どこの遊園地に行く?」

俺そういうの詳しくないから、と社長が言う。


「あ、そうですね。ここからだと、フラワァパークでしょうか」

フラワァパークは、都心にある有名な遊園地。
植物園も併設されており、老若男女問わず人気の場所だ。


「一番近いのはそこだよね。でも……」

「でも?」

「そこ、この間行ってた所じゃない? 牧田が、間瀬 涼音と」

私のことを気に掛けてくれてか、社長からそんな風に伺ってくれる。


「そう言えばそうでしたね」

強がりとかじゃなくて、本当に忘れていた。
そもそも社長とこうして遊園地に行く流れになったのも、尚と間瀬さんが遊園地デートしたというブログを見たからだというのに。


正直、尚との楽しかった思い出などは日に日にどんどん忘れている。
尚との今までの思い出より、社長とのこれからの思い出を作りたい……なんて考えてしまっている自分もいる……。
< 81 / 125 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop