Toxic(※閲覧注意)
ブリリアントの相変わらずゴージャスなエントランスに着くと、よく知った顔とばったり会った。

「夏目さん、お久しぶりです」

「ああ、佐野さん」

佐野さんは、大和の前任のインバウンド営業担当だ。

「今日はプライベートですか?」

「ええ。イタリアンのレストランで、お食事させていただく所」

「そうなんですか。利用していただきありがとうございます」

「いえいえ。ではまた」と返して、すでにエレベーターホールに向かって歩き出したみんなを追おうとすると、

「……ああ、そうだ。夏目さん」

佐野さんが私を引き留めた。

「なんですか?」

「大和のこと、よろしくお願いしますね」

「ええ。…………え?」

返事を返したものの、佐野さんが放った一言に違和感を感じて、私は首を傾げた。

一瞬、後任の担当を頼む、という意味だと思ったが……何故『柴宮』ではなく『大和』なのだろうか。

私が、『柴宮』の下の名前を知っているとは限らないのに。

「あの、佐野さん……それってどういう」

「ああ、引き止めてしまって申し訳ありません。では、どうぞ素敵なディナーを」

佐野さんはそう言って恭しくお辞儀すると、すたすたと裏口の方へと歩いて行ってしまった。

ああ、もうっ!

佐野さんにしろ大和にしろ、どうしてブリリアントの営業の男って、自分のペースでしか話さないの!

佐野さんの背中を見送りながら、私は思わず舌打ちをした。

それにしても、何だったのだろう。

って、ああ!

みんなに置いてかれてる!

私は急いで、エレベーターホールに向かった。
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