Toxic(※閲覧注意)
白を基調とした、上品な高級感に溢れる店内。

真ん中に置かれた白いグランドピアノ。

その素敵な空間に、みんながため息をもらす。

目の前の光景は、初めて大和とディナーをしたあの日のままだった。

たった2ヶ月ほど前のことだけれど、なんだか懐かしく思う。

あの時と違うのは、まだ夜景が綺麗な時間ではないことくらいだ。

ピアノのすぐ傍の大きなテーブル席に案内されて、適当に座った。

「ねえ、きょんきょん。さっき下で話してたの、このホテルの人? 知り合いなの?」

隣に座ったシホが、私に尋ねた。

「うん。仕事でよく来るから」

「ブリリアントに? 羨ましい! じゃあもしかして、ここのイタリアンも食べたことあるの?」

「うん。まあ……仕事でね」

あれが仕事だったのかどうか、今となっては疑問だ。

やっぱり、ただのデートだった気がするなあ。

そんなことを思い出してニヤニヤしていたら、

「アヤちゃん、もう着くって」

弘美のどうでもいい報告が水を差す。

そうだ、あの女が来ないから、私達は乾杯すらできていないのだ。

昔から本当に、いろいろと腹立たしい女だ。

「あれ、誰かケータイ鳴ってない?」

美奈の声に、一瞬しーんとなった所で、

……ブーン…ブーン…ブーン…………

はっきりと聞こえたバイブ音は、私のバッグの中のケータイから発せられていた。

「私だ……あ、切れちゃった」

ディスプレイを見ると、『円香さんから着信がありました』と表示されている。

円香? なんでメッセージじゃなくて、電話?

「私、ちょっと電話してくるね」

少し気になった私は、みんなにそう断って、席を立った。
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