Toxic(※閲覧注意)
「なあに? 美奈ちゃん」

率先して話すこともなく、みんなの話ににこにこと相槌を打っていただけのアヤは、のんびりとした返事を返した。

トイレでのアヤはあんなに饒舌で勝ち気だったのに、みんなと合流してからはまるで昔のままだ。

なぜ私の前でだけ、あんな態度だったのか。

何もかもが全く理解できないから、ひたすら不気味だ。

「旦那さん、呼んでくんないの?」

「えっ?」

「あ、そうだよ! ずいぶんイケメンらしいじゃん。 ね? 弘美」

悠子が弘美に言うと、

「うんっ! ちょーイケメンだよ! しかも若い!」

弘美が興奮気味に身を乗り出した。

「え、そうなの? 見たーい」

「うんうん!それに、こんな素晴らしい料理を安くいただいて、一言お礼言わなきゃ。呼んでよー」

そういえばアヤの旦那は、ここのシェフだかなんだかだと弘美が言っていた。

今日は確か、その旦那様のお陰で、高級イタリアンにありつけているんでしたっけ。

しかもイケメン? なんとも鬱陶しい話だ。

……あれ? 旦那?

じゃあアヤって、片桐と不倫してるってこと?

「えっと……あのね」

アヤがおずおずと口を開いた。

「うちの人、今日お休みだからいないの」

「えー、そうなの? 残念」

「てか今日の料理、旦那さんが作ってんじゃないんだ?」

悠子の問いに、

「あれ? うちの人、ブリリアントで働いてるってだけで、別にシェフじゃないよ」

アヤが首を傾げながら答えた。

「そうなんだ、じゃあホテルマン?」

「ううん。うちの人は……」

アヤはそこで一度言葉を切って、何故か私に視線を投げる。

そして──。


「うちの人、営業マンなの」


目だけが笑っていない歪な笑顔で、アヤは、私に向かって、そう告げた。
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