Toxic(※閲覧注意)
「あれ、響子。もう帰るの?」
フロアを出た所で、書類を手にちょうどこちらに歩いて来た円香とばったりあった。
同じく海外営業部の円香だが、訪日チームではないからそれほど忙しくはないはずだ。
この時間に残っているということは、今まで打ち合わせか何かだったのか。
「いや、今からブリリアントー」
「あら、そうなの?」
「増設したレストラン見てくんの。まあそのまま直帰するけど。円香は会議?」
「そうなのよ。やっと終わった所。2時間もかかっちゃって、やんなっちゃう」
眉を八の字にして言う円香に「ほんとお疲れ様」と労いの言葉をかける。
「ありがと。……あ、ねえ、響子今からブリリアント行くのよね?」
円香の顔が、急にニヤニヤした表情に変わった。
「ブリリアントって言えば、新しい担当さん、どうだった?」
こんな表情で訊いてくるのだから、どうせ円香は柴宮大和にもう会ったのだろう。
「どうって……別に?優秀そうで安心したかな」
私がわざと淡々と言えば、円香は「ふーん?」と相槌を打ったが、大きな目が楽しそうに弧を描いている。
「まあ、響子が興味なさそうにする時は、大抵気に入った時よね」
「なにそれ、そんなこと全然ないし」
「ふふ。どんだけアンタと一緒にいると思ってるのよ」
「あ、私もう出なきゃ!」
罰が悪くなって、私は慌てるふりをする。
ブリリアントは目と鼻の先だから、それほど急ぐ必要はないのだけれど。
「じゃあ素敵なディナーを。メイクくらい直せば?」
円香はからかうように言いながら、フロアに入っていった。
柴宮大和とディナーなんて、私、一言も言ってないのに。
フロアを出た所で、書類を手にちょうどこちらに歩いて来た円香とばったりあった。
同じく海外営業部の円香だが、訪日チームではないからそれほど忙しくはないはずだ。
この時間に残っているということは、今まで打ち合わせか何かだったのか。
「いや、今からブリリアントー」
「あら、そうなの?」
「増設したレストラン見てくんの。まあそのまま直帰するけど。円香は会議?」
「そうなのよ。やっと終わった所。2時間もかかっちゃって、やんなっちゃう」
眉を八の字にして言う円香に「ほんとお疲れ様」と労いの言葉をかける。
「ありがと。……あ、ねえ、響子今からブリリアント行くのよね?」
円香の顔が、急にニヤニヤした表情に変わった。
「ブリリアントって言えば、新しい担当さん、どうだった?」
こんな表情で訊いてくるのだから、どうせ円香は柴宮大和にもう会ったのだろう。
「どうって……別に?優秀そうで安心したかな」
私がわざと淡々と言えば、円香は「ふーん?」と相槌を打ったが、大きな目が楽しそうに弧を描いている。
「まあ、響子が興味なさそうにする時は、大抵気に入った時よね」
「なにそれ、そんなこと全然ないし」
「ふふ。どんだけアンタと一緒にいると思ってるのよ」
「あ、私もう出なきゃ!」
罰が悪くなって、私は慌てるふりをする。
ブリリアントは目と鼻の先だから、それほど急ぐ必要はないのだけれど。
「じゃあ素敵なディナーを。メイクくらい直せば?」
円香はからかうように言いながら、フロアに入っていった。
柴宮大和とディナーなんて、私、一言も言ってないのに。