Toxic(※閲覧注意)
「な、なに?」

真っ直ぐに見つめられて、年甲斐もなく思わずドキッとしてしまった。

「ボク、夏目さんに謝らなくちゃいけないことが」

「謝る?何を?」

「…………ふぅ」

柴宮は軽くため息をついて、フォークとナイフを静かに置いた。

そして、

「……今日は、まどろっこしいことをして、本当にすいません」

そう言って、丁寧に頭を下げた。

彼の言う、"まどろっこしい"こと……それは勿論、大した話もないのに私を呼び出した件だろう。

「まどろっこしいこと?」

他に思い当たることもないのに、私は少し首を傾げて聞き返した。

ちゃんと本人の口から、説明してもらうためだ。

じゃないと……おもしろくないもの。

彼はゆっくり顔を上げると、少し困ったように笑って、鼻の頭をポリポリと掻いた。

「えーっと……頭のいい夏目さんなら気づいてると思うけど……仕事の話ってのは、ただの口実です」

「でしょうね。……じゃあ、本当の目的は?」

私がストレートに尋ねると、柴宮大和は

「夏目さん、単刀直入に言うよ」

と、再び真っ直ぐな眼差しをこちらに向けた。

「……なに?」

「ボクは……いや、俺は、貴女と恋がしたい」

その色素の薄い瞳が、甘い声が。

突然、私の心臓に鋭い爪を立てた。
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