Toxic(※閲覧注意)
「別に。全然」

ついさっき、彼をオカズにしたくせに、「別に」なんて、どの口が言うのだろう。

自分でも呆れるくらい、かなり素っ気なく答えたのに、

『へえー、ふーん? そうなんだ』

柴宮はまるで何もかも見透かしたように、からかうような相槌を打った。

『まあ、もうちょっと我慢しててよ』

「ん、何?我慢って」

『時間できたら、デートしてあげるから』

して "あげる" から?

「ちょっと!なんで私がデートしてほしいみたいになってるの」

私が抗議すると、柴宮は

『へえ。じゃあ、したくないの?デート』

と、笑いながら尋ねてくる。

「だから、したくないとかそういう話じゃなくてね、スタンスの」

『だから、つまりはしたいってことでしょ』

私の言葉を遮って、彼は言った。

ああ言えばこう言う……なんだか調子が狂う。

「……あーもう、わかった。その日たまたま予定が空いてたら」

『ねえ、夏目さん』

投げやりに言った私の言葉を、柴宮は再び遮った。

やけに真面目な声色だ。

「……なに?」

『そういうのいいから』

「え?」

『俺、本気で口説いてるからね。だから夏目さんも、ちゃんと本気で口説かれてよ』

本気で口説かれるって、なに?

『俺がデートに誘ったら、その日は死ぬ気で空けて。そしたら……』

「……そしたら?何?」

『そしたら、ご褒美をあげる』

「ご褒美?」

聞き返したけれど、柴宮は何も答えずに、

『じゃあね、夏目さん。また連絡するよ』

急にそう言って、会話を一方的に終わらせた。
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