Toxic(※閲覧注意)
*****

正午を回っても、私のランチタイムは訪れない。

「じゃ響子、お先~」

いつもは一緒にランチをする円香が、私にヒラヒラと手を降ってフロアを出ていく。

本来なら、お昼休憩は12時から1時間だけれど、チームに誰もいなくなるわけにはいかないから、毎日交代で1人だけ残る。

今日はその電話番だったので、みんながランチに向かう中、すでにグーグー鳴りっぱなしのお腹に「あとちょっとだから」と言い聞かせながら、1人仕事をしているわけだ。

電話番は、できればやりたくない。

繁忙期はその大半を島根さんに任せてあるホテルとのやり取りが、コールバックを取ったせいで回ってきてしまうからだ。

まあ本当は私が話した方が、スムーズに予約も取れるし、値段交渉もできるのだが、今はやることが多過ぎて、そんなことをしている場合じゃない。

大小含め、今一体いくつのツアーを扱っているんだろう、数える気にもならない。

あー、もうやだ。

疲れたし、おなか空いたし、タバコ吸いたい。

結局電話はひっきりなしに鳴るから、午前中に済ませておきたかったツアーの件は1ミリも進まなかった。

おまけに、成田空港でピックアップ(出迎え)と合流できなかった迷子のオーストラリア人が、なぜかうちの部署に電話をかけてきて泣きつくから、電話口で面倒を見るはめになった。

ただでさえ訛りが強いのに、パニックで余計に早口だから、聞き取りづらくて困る。

名前を聞いて、絶対にその場から動かないように言い聞かせて、今度は空港に電話して……。

あーもう!

なんでくそ忙しい私が、迷子のお世話しなきゃいけないの。
< 45 / 123 >

この作品をシェア

pagetop