Toxic(※閲覧注意)
「……え?!これ……」

自分の瞳孔が、ものすごく大きく開いているのがわかる。

「だから、ご褒美」

プレゼントなんて微塵も想像してなかったし、しかもこの紙袋は……まさかのティファニーだ。

「花村で渡そうと思ってたのに、すっかり忘れてた。あ、安物なんだけどね」

柴宮はにっこり笑って言った。

「安物!ティファニーですけど?!」

「いや、値段調べてくれていいし。ほんと高くないから」

私が「でも」と言いかけた時、柴宮が「ほら、信号青になったよ」と歩き出したので、私も慌てて歩き出す。

「あの……ありがとう。嬉しい」

本当に、とても嬉しかった。

こんなに嬉しいのは、別に、もらったのがたまたま大好きなティファニーだからじゃない。

いや、ティファニーだから余計に嬉しいというのは、否定はしないけれど。

このマイペースで強引で偉そうな男が、私のためにアクセサリーを見繕ってくれた、その気持ちがとても嬉しいのだ。

低俗なご褒美を想像して、なんだか恥ずかしい。

……あれ?

私今、気持ちが嬉しい、って思った?

プレゼント攻撃なんて、女を口説くのによくある手段なのに。

どうしてこんなに嬉しいんだろう。

「ほんとは俺が付けてあげようと思ったんだけど……まあ、家でゆっくり開けてよ」

「え」

…………家?

今ついに横断歩道を渡りきって、もう駅の南口に着いた所だ。

もしかして、今日はこのまま、解散?

そんなこと、あるの?!
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