Toxic(※閲覧注意)
気づけばそろそろ、待ち合わせをしたJRの南口に着く頃だ。

どこかのバーか何かにふらっと入るのかと思ったのに、柴宮は全く見向きもしないで歩いていた。

どうする気なのだろう。

この大きな交差点を渡ったら、もう駅に着いてしまうというのに。

「あ、そうだ。忘れてた」

信号待ちをしていたら、柴宮が突然思い出したように声を上げた。

「なに?」

「夏目さんへのご褒美」

ああ、ご褒美ね。

正直に言えば、私は『ご褒美』という言葉に対して、軽くいやらしい想像をしていた。

つまり、ご褒美にセックス。

「もう少し我慢してて」とか「デートしてあげる」とか言う彼だ、そういうこと言いそうだもの。

それもあって、私は今日彼とセックスするんだろう、と思っている所もあった。

「ご褒美って、何かくれるの?」

プレゼントは俺、とかベタなこと言うのかな、なんて想像しながら訊くと、柴宮は鞄を開けて何かを取り出す。

「こんな所で渡すのも変だけど」

私の目の前に、薄いエメラルド色の紙袋を差し出した。
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