毎日、失恋。

ある時の体育の時間。

男子は幅跳び、女子は短距離のタイムを測っていた。

「なぁ、高橋って最近、雰囲気変わったと思わね？」

普段からつるむことの多い西崎が女子の方を見て言う。

「ああ、分かるそれ。俺もそれ、ちょっと思ってたわ。なんつーか、いるかいないかわかんなかったくらいなのに最近、表情が明るくなったじゃん？不意打ちの笑顔に思わずおおってなるよな。」

と、西崎の言葉に頷きながら武田まで。

武田と西崎は中学からの腐れ縁で数少ない僕の黒歴史を知る友人達でもある。

「それな。しかもよく見ると、結構なナイスバディだったりするんだよねぇ。」

西崎のその言葉に視線が高橋さんに集まる。思わず僕はーーー

「ちょ、八神、お前なんで人の前に立ちはだかるんだよ。どけって、今、高橋のナイスバディを確認…っておいっ！」

そいつらの目を手で塞いだ。

「高橋さん、見るの禁止。」

「はぁ？なにそれ？えっ、てか…八神、お前、高橋のこと好きなのか？いや、神の領域であるお前ならもう既に高橋と付き合ってるとか…？」

武田よ、お前、普段ボーッとしてんのに中々鋭いじゃん。

しかし残念ながら付き合うどころか彼女には好きな人がいて既に失恋してんだよね。

だからといってこいつらになにもかも打ち明けるにはまだ早い。

「まぁ…、お前らがそう思うならそれでいいよ。」

決して否定はしない。

どう思うかはこいつらの勝手だ。僕に取って都合のいい解釈をそのまましてくれればいい。

だけど、高橋さんの魅力をこれ以上こいつらにも他のやつらにも知られるわけにはいかない。

確かに最近の高橋さんは学校でも笑顔が増えて僕としては嬉しい反面、こういう目で見るやつらが出てきて困ってんだよね。

はぁ…しかも高橋さん無防備だしね。

先が思いやられるわ。