時空間への旅人

「やっぱり間違いなくお父さんだ。」
カナにはもう迷いはありませんでした。
「ねえ～お父さん。私に会いたいからわざわざ夢の中に来てくれたの。」 カナは質問しました。 父親は今までのうれしそうな笑顔がなくなりました。
「そうだよ。カナに伝えたいことあって。」 「伝えたいこと…‥。」 お父さんはなぜか怒りに震えていました。
「お父さんの世界に来ないか。あっちの世界にいても良いことないだろう。お父さんは知っているんだぞ。カナがひがみぽくなってしまったことを。お父さんの世界はいいぞ。お金や人間関係での苦労なんてないんだから。」
カナは父親の言葉に頭の中が混乱しました。
「お父さんそれって私に死ねと言うこと？。」
父親はカナの腕をつかんでいた。カナは怖くなり、父親の腕を振り払おうとしました。しかし父親の腕はカナからはなれません。
「カナ、一緒に行こう。お父さんと。」
すると今までいたアパートの部屋がなくなりました。周りに別の風景が現れました。
菜の花畑に２人はいました。限りなく菜の花畑が続いていました。
「私、生きたくない。お父さんごめん。」
「どうしてだい。あっちの世界にいても良いことないじゃないか。」
父親は怒っていました。怒りで体が震えていました。
「まだ死にたくない。」 カナは大声で叫びました。
父親はカナの腕で離しました。すると今度は違う手がカナの腕をつかみました。ただカナにはその手は見えません。しかし誰かがカナの腕をつかんでいました。
「この手はお母さんだ。」
カナはその手が母親の手だとわかりました。
「わかったよ、カナ。」 父親は笑顔に戻っていました。
「じゃあカナ、ここでお別れだ。お母さんを大切にしてくれ。」
「お父さん、又会える。お願いだから会えると言って。」
父親はやさしくカナを抱きしめてくれました。カナに父親のぬくもりが伝わりました。
「暖かい。」
カナは涙が又止まらなくなりました。
父親は頬を流れる涙を拭いてくれました。
「残念ながら、もう会えない。」
「どうして。私が夢を見ると会えるじゃないの。」