時空間への旅人
カナは納得できずにいました。
「お父さんは死んでいるんだよ。だから1回しかカナに会えるチャンスがないんだ。それにお父さんはあっちの世界に帰らないといけないし。」 父親は満足した顔をしていました。
カナはわかっていました。いつも死んでしまった父親に会えるならと願っていたことを…‥。
「カナ元気でな。」
一瞬にして、菜の花畑と父親の姿がカナも目の前から消えました。 カナはさっきまでいたアパートの前に立っていました。
カナの腕にはもう母親のぬくもりはなくなっていました。
「夢から覚めたんじゃないんだ。」
カナはもう父親に会えないかと思うと悲しくなりました。しかしあっちの世界に行くことはやはり駄目なことだとわかっていました。
「お母さんがいるから、行くわけいかない。」
カナは母親が腕をつかんでくれたことが、本当にうれしかった。
「ギンギン。」 その時、カナに聞き覚えがある音が聞こえてきました。
「私の夢にも、あのタヌキが出てくるの。」
カナは周りを見渡しました。するとアパートの2階からゆっくりと階段を降りていました。
「この無礼者。タヌキじゃない、コアと呼びなさい。」
コアは階段を降りるとカナに近づいてきました。カナは昨日ユリの夢の中であの臭い匂いを嗅がされた記憶が蘇っていました。
「これ以上、近づかないで。」
カナは後ずさりしました。
「逃げなくていいよ。今日は何もしないから。」 コアは笑いました。
カナはコアの言う通りにしました。なぜかコアが昨日と違ってやさしく見えたからです。
「良かったね、お父さんと会えて。」
「なぜそんなこと知っているの。あなた何者。」「私は夢の番人コア。これからもよろしく。」
「あの呪文を唱えるとあなたに会えるの。」
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