耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー


「今日のお仕事は五時までなの。」

「分かりました。あまり無理しすぎないように気を付けて下さいね。」

「は~い。」

玄関の三和土(たたき)でサンダルを履いた美寧は、上り框の上に立つ怜を見上げ笑顔で返事をする。

今日は七月最後の日曜日。美寧はアルバイト先であるラプワールへと向かうところだ。
一方、怜は日曜日で大学での授業は無いが、前期末の試験の採点やレポートなどの仕事が詰まっているようで、今日は一日自室に籠って仕事をするという。

「れいちゃんも。お仕事頑張りすぎないでね。」

グッと首を後ろに倒し、怜の目を見て言う。

「お昼ご飯も。ちゃんと食べてね。」

怜は仕事に没頭すると、時間を忘れるくらいに集中する。ともすると食事の時間にも気付かないこともあるほどだ。

この家に住み始めてしばらく経った頃、部屋に籠っていつまでも出て来ない怜に、心配になった美寧が怜の自室まで様子を窺いに行ったことがある。それ以降、美寧は怜が自室で仕事をしている時は、食事の時間に気を付けるようになった。

怜の瞳をじーっと見つめ、念を押すように言うと、怜は切れ長の二重の瞳を薄く緩め、「ありがとう。気を付けます。」と口にした。

その言葉に満足した美寧は、すぐに見上げていた顔を下げる。少しだけ首が痛かったからだ。
上り框の上に立つ怜の顔は、三和土に立っている美寧からはかなり上にある。ただでさえ怜との身長差が二十センチ以上あるから、見上げるだけで一苦労なのだ。
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