耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
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「美寧ちゃん、どうかしたのかい?ボーっとして。」
「えっ、あっ、すみませんっ」
美寧は手に持っていた丸いトレーから慌てて水をカウンターに座る客の前に置く。
「俺はいつものな。」
「美寧ちゃん、わしも。」
「はい!―――マスター、ブレンド・ホット、二つです。」
美寧は自分がアルバイトの最中だということを思い出した。
うっかり他のことに気を取られていると、きっとまたとんでもない失敗をしてしまう。
ここで働き始めて二週間。
仕事にも少しずつだけど慣れてきて、最初のような酷い失敗は減ったけれど、それでもマスターや常連さんには迷惑を掛けることが多い。少しでも失敗をせずお店の役に立ちたいと日々思っている美寧は、今は仕事に集中しようと、気を引き締めた。
美寧がアルバイトに通う【カフェ ラプワール】は、怜の家から五分ほどの場所にあり、商店街の一番端の路地を入ったところにある小さな喫茶店だ。
ラプワールはあまり目立たない場所にあるけれど、近所の人や商店街に来るお客さん達に愛されていて、小さな店ながらも客足が途絶えることがあまりなく、毎日それなりに忙しい。
実は美寧。生まれてこの方“仕事”というものをしたことがなかったのだ。
それは“外で働く”ということだけでなく“家で働く”すなわち“家事”さえしたことがない。二十一年間生きてきて、この数週間に初めてのことを幾つも体験している。
そんな美寧なので、当たり前だけどこの二週間失敗だらけだった。カップやお皿を割ったことは両手に入らないほどだし、それどころか最初のころはカップからコーヒーをこぼさずに置くことすら儘ならなかったのだ。
そんな美寧に、ラプワールのマスターは少しも怒ることなく何度も丁寧に教えてくれる。マスターだけでなく常連のお客さん達も、美寧のことを温かく見守ってくれる毎日なのだ。