耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー

「お待たせしました、ブレンド・ホットです。」

そっとカウンターにコーヒーを置く。ソーサーがカチン音を立てたが、中身をこぼさずに置くことが出来た。

「ありがとう、美寧ちゃん。だいぶん上達したんじゃないかい?」

「本当ですか!?ありがとうございます。」

はにかんだ笑顔でお礼を言う美寧に、常連客の田中は目を細める。

「そうだよぅ、給仕さんのお仕着せも随分板に付いたじゃないか。」

頷きながらそう言うのはもう一人の常連、柴田だ。隣に座わる田中が「給仕さんって、古いんだよ。今はウェイトレスって言うだろう」と突っ込んでいる。

美寧は今、黒いワンピースの上から白いエプロンを身に着けている。七分袖で膝丈のフレアスカートの黒いワンピースは可愛らしい上に、意外と動きやすい。その上から肩口にフリルが付いたレトロな白いエプロンを羽織っているので、たしかに柴田の『給仕さん』という言い回しがピッタリくる。

【カフェ ラプワール】にはそもそも制服と言うものはない。小さな店なのでずっとマスターが一人で切り盛りしていた。そこにある日突然アルバイトに入った美寧の為に、奥さんが用意してくれたのだ。
ちなみにマスターは、だいたい半袖のポロシャツやリネンシャツとジーンズの上から黒いエプロンを着けているだけで、制服を着ているのは美寧だけだ。

常連二人の遣り取りに笑っている美寧を、カウンターの奥からマスターがホッとした顔で見ていた。



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