耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー



「え、妊娠?」

「うん」

怜はピタリと動きを止めた。宙に浮いた右手の茶碗の中には、栗ご飯が湯気を立てている。

見るからにほくほくと美味しそうな栗は、怜の研究室の修士生である竹下からのお裾分け。母親の実家から沢山送られて来たからと、先日怜のところに持ってきたものだ。

今月の始め、彼女とのデートの為の休暇を融通してからというもの、竹下にはみょうに懐かれた感が否めない。
このお裾分けの数日前にも、「彼女と一緒に行ってきました」と関東近郊の有名な温泉地の温泉饅頭を土産に貰った。


切れ長の瞳に真っ直ぐ見つめられ、美寧はこくりと頷いた。

「二か月だって」

「そうですか……」

「うん。赤ちゃん楽しみだね」

にこにこと笑顔でそう言った美寧は、パクリと栗ご飯を頬張ると「美味しい!」と満面の笑みを浮かべる。そんな彼女を見て怜は切れ長の瞳でじっと見つめた。

テーブルの上には、怜の作った夕飯が並ぶ。
栗ご飯、エビのししとう挟み揚げ、南瓜のツナしそマリネ、トマトのカルパッチョ、根菜汁。
量はどれも少しずつだが、旬の食材を使った栄養バランスの取れたメニューになっている。
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