耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
ここに来た当初の美寧の食の細さには、ずいぶん驚かされた。
彼女を診察した友人医師に栄養失調と診断され、怜はやせ細った美寧に何とか少しでも栄養を取ってもらおうと、料理には心気を砕いてきたのだ。

二か月前は食卓に並ぶ皿を見ると、かすかに眉間に皺を寄せていた美寧。本人はきっと無意識なのだと思うが、そこには 隠しきれないほどの“食事”への嫌悪感が滲み出ていた。

けれどそんな彼女が、今は目の前で楽しそうに食事をしている。
怜が作った料理を見ると嬉しそうにし、口にすれば「美味しい」と更に笑顔になる。
それだけでなく、近頃は少しずつ料理を覚えようと彼女なりに頑張っていて、それが自分の為なのだから、嬉しくないはずがない。
怜は幸せそうに夕飯を口に運ぶ彼女の様子に、しばらく見入っていた。


突然、何かをハッと思い出したかのように美寧は顔を上げた。

「それでね?怜ちゃんにお願いがあるの」

「お願い、ですか?」

「うん」

「いいですよ?俺に出来ることであれば」

「ほんと?良かった!実はね……」

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