耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー

(れいちゃん、困ってたのかなぁ……)

彼の横顔を思い出す。耳の端が赤く染まっている。
普段はあまり大きく表情を変えることのない怜が、そんなふうになることは珍しい。それがどうしてなのか美寧には見当もつかなくて、また自分の発言が彼を困らせてしまったのかも、と心配になる。

ちゃんと告白しようと思えば思うほど、かえってそれを意識してしまうせいで不自然な態度を取ってしまい、どんどん言いづらくなってしまっていた。


むき出しの首筋にひとすじの汗が伝う。(ぬる)めとはいえ、晩夏の夜、長湯をすればすぐにのぼせてしまう。
夏でもシャワーだけでなく湯を沸かすのは、冷え性の美寧の体を改善するための怜の思惑(おもわく)だ。怜が一人だった時はシャワーだけで済ませていたことを、美寧は知らない。

ずぶずぶと、口のすぐ下まで湯船に埋める。愛用のタオル生地のヘアキャップはユズキからもらった“女の子の必需品”の一つで、洗いあがりの長いがまとめて(くる)める優れものだ。

「頑張ろう……」

小さく呟くと、美寧は湯船から立ち上がった。


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