耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー

(結局私は、お父さまにとって要らない子だったのよね……)

丸くこんもりとした薄紫の花に向かって(こうべ)を垂れる。
濡れそぼった髪が首元にまとわりつくけれど、そんなことは気にならない。

行き場のなくした想いに耐え切れず、衝動的に家を出て来た。梅雨の最中(さなか)だというのに傘を持って出ることすら考えなかった。


そろそろ戻らないといけない。
誰にも何も言わずに出てきたから、ひょっとしたら今頃自分のことを探しているかもしれない。もっともそれは父ではなく、雇われた家政婦たちだろうけれど。

美寧がいなくなったら、父だけでなく彼らにも迷惑をかけるだろう。そう分かっているのに、地に足が張り付いたみたいに動かない。


ザーザーと鳴っていた雨音が、少し弱まってきた。けれど厚い雲に覆われた薄暗い空には、太陽が顔を出すことはもうなさそうだ。


「会いたいよ……おじいさま…………」

紫陽花の根元にしゃがみこんだ美寧は、膝を抱えてうずくまった。

止まない雨が美寧の体を濡らしていく。腰まである長い髪は濡れそぼち、肌を滑る水滴が熱を奪っていく。
けれど彼女を濡らすのは雨だれだけで、涙が頬を濡らすことはなかった。



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