耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー



「わっ!すごい!!れいちゃん見た!?」

バシャンと水を叩く大きな音と同時に、美寧は歓声を上げた。両手をパチパチと忙しく鳴らしながら隣を見る。

「すごいですね。イルカのジャンプ力は」

「ほんと!しかもすっごく賢い!」

大きな扇型のプールの中を自由自在に泳ぐ二頭のイルカたちを観ながら、美寧は大きな瞳をきらきらと輝かせた。


美寧が微熱を出した週の終わり。美寧は怜と水族館に来ていた。

美寧の微熱は涼香の診断通り夏バテの一種だったようで、きちんと食事をとり、薬を飲んで眠っているうちに程なくして治まった。それもこれも甲斐甲斐しく世話をする怜のおかげだ。

アルバイトは今週いっぱいお休み。【ラプワール】のマスターから電話越しに、『今週はきちんと休んで。元気になったらまたよろしくな』と言われ、大人しく頷いたのだった。
なぜかマスターは妙に美寧に甘い。

休養の期間、最初は大人しくしていた美寧だけど、体調が回復して元気になるにつれ、時間を持て余すようになっていた。怜は大学での仕事がある。

一人きりで何日も家にいることが久しぶりだったせいで、色々な事を考える時間があった。これまで考えないようにしてきたこと。けれど、決して忘れてはいなかったこと。
祖父の夢を見たことも原因の一つかもしれない。

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