耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー

駅前の商店街を抜けると、住宅街に続く道を行かずに途中の公園を通り抜ける。怜の自宅へはこれが最短ルート。公園を抜けて五分もすれば、彼が住む家がある。

この公園は中規模な緑地公園で、大きなため池を遊歩道がぐるりと一周している。その周りには遊具のある広場や噴水、樹木園などがあって、日頃から近くの住人に親しまれているのだ。今時分では紫陽花が色づき始め、公園に来る人の目を楽しませるようになってきた。

いつもは日没近くまで賑わっている公園も、今日は静かだ。
今日は丸一日しっかりと降り続く雨のため、日没前の今、すでにひと気はほとんど無い。滑り台もブランコも雨垂れに打たれ、どこか寂しげに見える。

雨に濡れた花弁の横を颯爽と進んで行く怜の耳に、ふと、何か小さな鳴き声が聞こえた気がした。

(ん?今何か聞こえた気が…子猫か?)

耳を澄ましてみる。
すると、やっぱりどこか遠くで何かか細い鳴き声のような音がする。
怜は、そのか細い音を頼りにゆっくりと木と木の間を通り、茂みを掻き分けた。
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