耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー


ガタン、ガラガラ。
ここ一か月あまりで耳に馴染んだ音が聞こえる。縁側の雨戸を開ける音だ。
瞼の向こうに強い陽射しを感じ、美寧は思わず眉間にしわを寄せた。

「ミネ。―――そろそろ起きませんか?」

縁側に面した障子が少し開き、そこから柔らかな声が聞こえた。毎朝美寧を起こすのは怜の役目だ。

「う…う~ん、れいちゃん、もうちょっと……」

美寧は朝に弱い。低血圧なのだ。
平日は七時半には起きて怜と一緒に朝食を食べるが、怜を見送った後ソファーでしばらくぼんやりしてしまうことも少なくはない。

けれど今日は日曜日。
怜は大学の期末試験や何やらと忙しいらしく、昨日も出勤したので、今日はやっと迎えた“休日”なのだ。
二人で水族館に行くはずだったあの日から初めての、二人そろっての休日。
美寧の肩書が、藤波家のただの居候から怜の恋人へと変わってからまだ数日ほどだ。

「これでも大分待ったのですが…。早く起きて俺をかまって、ミネ。」

やけに近くで声がして、驚いて目を開けると、すぐ目の前に怜の顔があった。
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