耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー


ふわり、と羽根でくすぐられたような感触だった。

前に一度したことのある、熱くて湿った重みのある口づけではなく、ただ唇と唇がくっついているだけの軽やかなキス。
それは手と手を繋ぐ代わりに唇同士を触れ合わせているだけの、優しいキス。

そんな幼子同士の戯れのようなキスですら、美寧をドキドキさせるのは十分だった。

(あったかい……)

合わさった唇から、怜の温もりが伝わってくる。
少し薄めのその唇は美寧が思っていたよりも固くなくて、触れ合わせていても嫌な気持ちには全然ならない。

前にしたキスは、美寧にとっては突然すぎた上に濃厚すぎて、良いのか悪いのかを考える余裕など皆無だった。

けれど、このキスは嫌ではない。むしろ、少し心地良いと感じてしまう。

じっと、ただじっと。
重ね合わせた唇から、怜の気配や香り、息遣いを感じ取っていた。


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