旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
「……ありがとうございます」

おずおずと彼の手を取ると私を引き上げた。だけど一向に手を離してくれない。

「あの、俊也さん?」

彼の名前を呼んだ瞬間、ナチュラルにキスされた。

触れるだけのキスはすぐに離れ、驚き固まる私を見て微笑んだ。

「起こしてくれてありがとう。朝ご飯、楽しみだよ」

「……っ! 急いで準備します」

恥ずかしくなり、逃げるように寝室から出た。

キッチンに駆け込み、朝食の準備に取りかかるものの、私の胸の鼓動は忙しなく動いたまま。

俊也さんは私をからかったり、意地悪なことをした後は必ずと言っていいほどキスをする。

まるで仲直りしようと言うように甘いキスをしてくるんだ。

思い出すと……だめだ、熱くて顔から火が出そうになる。

俊也さんとのキスを頭の中から必死に追い出して、朝食の準備を進めた。



「ちょっとちょっと、見たわよ~? 今朝も仲良く夫婦揃って出勤してくるところを。なによ、もうすっかりラブラブじゃない」

「いや、別にそういうわけでは……」

この日の昼休み。久しぶりに社食で玲子と昼食を共にしていると、開口一番に俊也さんとのことをからかわれた。
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