旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
私の方こそここが社食ということを忘れて声を荒らげてしまった。だけどすぐに我に返ると周囲の視線を感じ、小さくなりながら水を一気に飲み干す。

「変なことを言わないで」

刺々しい声で言うと、玲子はキョトンとした。

「変なことじゃないでしょ? 好きの先にある自然の行為じゃない。その反応だと、まだ一線は超えていないようね」

「……当たり前でしょ?」

こういう話をすることに慣れていなくて、いつもより早口になる。

すると玲子は箸を持つ手を止め、まじまじと私を眺めた。

「でも惹かれてはいるんでしょ? 結婚生活も楽しいんじゃないの? だって最近の芽衣、とても幸せそうだもの」

玲子の目に私は幸せそうに映っているの?

信じられなくて私の手も止まる。すると彼女は得意げな顔を見せた。

「本当よ? ……正直、好きになりかけているんでしょ? 別に隠すことないじゃない。夫婦なんだもの、好きになれたならよかったじゃん」

「それはそうだけど……」

言葉が続かない。本当に今の状況が良い方向に向かっているのだろうか。
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