旦那様の独占欲に火をつけてしまいました～私、契約妻だったはずですが！～
それに落ち込んだって仕方ないじゃない。店長たちが言うことは正しいもの。私はただ、これまで以上に精進するしかないんだ。

「……よし！」

気持ちを入れ替えて、預かっているスペアのカードキーで家に入った。

「すみません、遅くなっちゃって」

鍵を閉めて家の中に入ると、なにやらキッチンの方から焦げ臭い匂いが漂ってきた。

「え、なに？　もしかして火事？」

急いでキッチンに向かうと、そこにはエプロンをつけた俊也さんが立っていて、私が来るなりギクリと身体を反応させた。

「おかえり、芽衣」

「……ただいまです」

私に向けられた笑顔はぎこちない。

えっと……とりあえず火事ではなくて安心した。じゃあこの匂いは、もしかして俊也さんが料理を作ってくれたの？

気になってキッチンを覗き込むと、彼越しに見えたのは真っ黒に焦げたフライパンと、皿に盛られていた黒い物体。

「あれは……」

ジッと見つめていると、俊也さんは深いため息を漏らした。

「芽衣が料理するところを見て、俺にもできると思ったんだが……浅はかだった」

がっくり項垂れた俊也さんは、横にずれた。すると目に飛び込んできたのは、流し台に溢れた汚れ物と荒らされたキッチンだった。
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