旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
寒いし、さっきから頭が重い。明日も仕事があるのに、風邪なんて引いている場合じゃないもの。

おぼつかない足取りでオフィスのドアを開けると、すぐに俊也さんが焦った様子で椅子から立ち上がった。

「芽衣!」

「俊也さん……?」

彼が家にいる時のように名前で呼ぶものだから、ここが会社ということも忘れて私も名前で呼んでしまった。

だけどオフィスには私たち以外誰もおらず、ホッと胸を撫で下ろす。その間、彼はこちらに向かってきた。

「大丈夫か? 電話に出ないから心配していたんだ」

「え、電話?」

バッグの中に入れっぱなしのスマホを見ると、彼からたくさんの着信履歴が残っていた。

「すみません、マナーモードにしていて気づきませんでした」

「なにもなかったならいいんだ。さっき店長から謝罪の連絡を受けたよ。お疲れ、商品が集まってよかったな。よく頑張った。……おい、ずぶ濡れじゃないか!」

私が濡れていることに気づいた彼は、急いで着ていたジャケットを脱いで私にかけてくれた。
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