旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
だからといって、言われるがままついていってもいいのかな。面識がまったくない相手なのに。でもどんな話なのか気になる。

迷っていると、彼女は懇願した。

「あなたのためにお話したいことなんです。……少しお時間いただけませんか?」

切実な思いに不安を残しながらも了承し、彼女についていくと、会社近くのカフェに入った。

それぞれコーヒーを注文し、それが運ばれてくるとやっと彼女は口を開いた。

「突然お伺いしたにもかかわらず、お時間いただきありがとうございました」

「いいえ、そんな」

丁寧に言われると、恐縮してしまう。

見た感じ、育ちがよさそうだし……もしかしてどこかの社長令嬢だろうか。

そんなことを考えながらコーヒーを一口飲む。
するとずっと口を閉ざしていた彼女が話し出した。

「私は一年ほど前まで、俊也さんと交際していた中のひとりです」

一年ほど前ってことは、私が本社の商品部に異動してきた頃だ。そっか、予想はしていたけど、やっぱり俊也さんと付き合っていた人だったんだ。
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