旦那様の独占欲に火をつけてしまいました～私、契約妻だったはずですが！～

「俊也さんを知れば知るほど、好きになっていきました。……そんな時、知ってしまったんです。彼は相手が誰だろうと、もう二度と誰も本気で愛することができない人だと」

「……どういうこと、でしょうか？」

意味深なことを言う彼女に、心臓が暴れ出す。

もしかして彼女は知っているのだろうか。俊也さんが私に『好きになることはできても、愛することはできない』と言った言葉の意味が。

「その様子だと、あなたは知らなかったようですね。……会いに来てよかった」

そう言うと彼女はコーヒーを飲み、真っ直ぐ私を見つめた。

「俊也さんには、生涯忘れられない女性がいます。これから先もずっと、彼の心はその女性だけのもの。……あなたは言われませんでしたか？　好きにはなれるけど、愛することはできないって」

言われてからずっと頭の片隅にあった言葉を言われ、心がざわつく。

もしかしてこの人も俊也さんに、同じことを言われたの？

彼女から視線を逸らせずにいると、私の気持ちを察したのか、切なげに瞳を揺らした。

「私も言われたんです。……付き合ってほしいと告白した時に。自分の心は一生ひとりの女性のものだって。それでもいいなら、よろしくって」

一生ひとりの女性のもの……。

彼女の言葉を心の中で復唱してしまう。