旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
「私は彼を心から愛してしまったから、自分のものにならないなんて耐えられなくなり、自ら別れを切り出しました。……あなたたちの結婚に愛はなく、割り切った関係ならなにも言いません。だけどもし、恋愛感情を抱いているなら気をつけて。本気になったらだめ。……あなたが傷つくだけですよ」

さっきからずっと頭の中が混乱している。でも彼女が嘘を言っているようには見えないし、なによりすべて辻褄が合う。

俊也さんは私にも同じことを言ってきた。私は特に気持ちの違いなんてないと思っていたけれど……。

彼女の言う通り、彼には一生忘れられない女性がいるの? 愛しているのはその女性だけ? だからあんなことを言ったの?

もしそれが真実ならこれから先、例え死ぬまで共に過ごしても、俊也さんと私の気持ちが重なる日がくることはない。

急激に胸が苦しくなる。

「余計なお世話だったらすみません。でも、私と同じ思いをさせたくなかったんです」

そう言うと彼女は静かに立ち上がった。
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