旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
だけど平静を装い「ありがとう」と言いながら、紅茶を一口飲んだ。
それでもまだ心が落ち着かない。

俊也さんは今、どんな気持ちでいるのだろうか。彼の気持ちを考えるだけで怖くなる。

カップを持つ手が強まる中、お兄ちゃんは私の様子を窺いながら聞いてきた。

「俊也となにかあったんだよな? ……俺でよかったら話を聞くぞ」

「お兄ちゃん……」

俊也さんのことを話していいのか一瞬迷ったものの、とてもじゃないけれどひとりでは抱え込めない。話を聞いて教えてほしい。私はいったいどうしたらいいのか教えて。

私の答えを待つお兄ちゃんに言葉を選びながら話していった。

お兄ちゃんは口を挟むことなく最後まで私の話を聞いた後、深いため息を漏らした。

「芽衣と結婚したんだ。すっかり立ち直ったと思っていたのに。……あいつ、まだ姫乃のことを忘れていなかったのか」

「え……お兄ちゃん、姫乃さんのことを知ってるの?」

「……あぁ、知ってるよ」

< 172 / 262 >

この作品をシェア

pagetop