旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
「お兄ちゃん……? どうしてここに……」

唖然とする私を、お兄ちゃんは力いっぱい抱きしめた。

「帰宅途中、たまたま通りかかったんだ。信号待ちしていた時、泣いている芽衣を見つけて……。お前こそなにやっているんだ、こんなに泣いて……!」

瞬時に俊也さんとのやり取りが脳裏に浮かんだ。

お兄ちゃんの前なのにだめだ、また涙が溢れる。

耐え切れなくなり、私はお兄ちゃんの胸に飛び込み、子供のようにわんわん泣いてしまった。

そんな私にお兄ちゃんはなにも言うことなく、泣き止むまで優しく背中を擦ってくれた。




あれから私はお兄ちゃんと共に実家に帰った。帰る前にお兄ちゃんが両親に連絡をしてくれていて、ふたりはなにも言わず私を出迎えてくれた。

お兄ちゃんの部屋に通され、今に至る。

「これ、母さんが淹れてくれた紅茶」

「ありがとう」

カップを受け取ると、お兄ちゃんはソファに座っている私の隣に腰掛けた。

「俊也には俺から連絡を入れておいたよ。……しばらく芽衣を預かるとも」

俊也さんの名前に、身体が反応してしまう。
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