旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
「全然。好きだから一緒にいたいと思うのは当然だろ?」

「はいはい、ごちそうさま。……でもたまには俺たちとも付き合えよな?」

むくれる昴を見て思わず笑ってしまった。

「わかったよ、昴が寂しがるから今日の放課後は付き合うよ」

肩に腕を回して言うと、昴は声を荒らげた。

「べ、別に俺は寂しくなんてないからな! ……まぁ、お前がどうしても遊びたいって言うなら付き合ってやってもいいけど?」

素直じゃない昴に、俺はまた笑ってしまった。

外部受験などで数名の入れ替えはあったものの、ほとんどが大学まで進学し、俺と姫乃は昴たちと楽しい学生生活を送っていった。

姫乃も昴と打ち解け、高校生になるとよく三人でいる時間が増えた。それは大学生になってからも変わらなかった。

よく口喧嘩をしながらも、頼りになる親友の昴と、婚約者で初恋の姫乃とこれから先もずっと一緒にいられると信じて疑うことはなかった。あの日までは……。


大学生活にも慣れてきた頃から、姫乃の体調が優れない日が続いた。

「一度病院で診てもらった方がいいんじゃないか?」と心配する俺に、彼女は「ここ最近、レポート続きで寝ていないから疲れているだけだよ」と元気に笑顔を見せる姫乃に、俺はそれ以上なにも言うことはなかった。
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