旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
だけど一年が過ぎ、二十歳を過ぎたある日、大学を急に休んだ姫乃に連絡がつかなくなった。

心配になり大学の授業を終えて昴と共に家を訪ねた時、そこで初めて知ったんだ。彼女が抱えていた運命を。

「腫瘍、ですか……?」

姫乃の両親から聞いた話は衝撃が大きくて、言葉が続かなかった。

姫乃はずっと頭痛やめまい、時には吐き気に見舞われていたようだ。今朝は特にひどい頭痛に襲われ、心配した両親と共に病院を受診し検査を受けた結果、脳に腫瘍が見つかり即日入院になったと。

隣で話を聞いていた昴も、信じられないのか固まっている。

「悪性のものか、良性のものか詳しく検査しているところだが……おそらく悪性だろうと医者は言っていた」

悪性の脳腫瘍……? 聞いても医学の知識がまったくない俺には、姫乃が今どんな状態なのか理解することができない。

「あの、姫乃は大丈夫なんですよね?」

医学は日々進歩している。完治するよな? 元気になるんだよな?

すがる思いで聞くと、おじさんとおばさんは顔を見合わせた後、目を伏せた。

「腫瘍はだいぶ大きいらしい。……手術で取り除けるかも、わからないと」

おじさんが話した瞬間、おばさんは声を上げて泣き出した。
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