旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
どうしても俺の心の片隅には姫乃がいて、一生いなくなることはない。なにより彼女以上に愛せる女性など、現れなかった。

進むべき道が決まらず、母方の性を名乗って入社した父親の会社で、俺は仕事の楽しさを知った。

周囲からプレイボーイや、独身貴族と言われようと、やり甲斐のある仕事に打ち込み、好きな時に誰かのぬくもりに触れる日々も、そう悪くない。そう思っていた。

そんな俺の考えを変えるきっかけとなったのが、部下である織田の結婚式だった。

彼女の相手は、十年以上想い続けていたと知り、一途な想いの先に結ばれたふたりの結婚式は、想像以上に感動的なものだった。

相手は海上自衛官で、一年の大半を海の上で過ごしている。

結婚が決まった時に、『会えなくて寂しくないのか?』と聞いた時があった。すると彼女は『もちろん寂しいですけど、その分ふたりで過ごせる時間は宝物なんです』と照れながら言っていた。

それを聞き、遠い昔の記憶が蘇ったんだ。

俺も姫乃と会って話をするだけで楽しくて、幸せだったと。
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