旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
だけどその後の俺の人生は、到底姫乃に喜んでもらえるものではなかった。

姫乃が亡くなって一年後、両親は俺に新たな婚約者を紹介してきた。今思えば、俺のためを思ってのことだとわかるが、当時の俺は両親の気持ちが信じられなくて大げんかし、家を飛び出した。

祖母の家で過ごし、父親の会社を継ぐ道に進んでいいのかと迷い。苛立ちの毎日の中、ただ誰かのぬくもりを感じたくて、たくさんの女性と関係を持った。

だけど満たされることはなく、姫乃を失った悲しみが増すばかりだった。

いつしか愛のない行為を肯定していくようになり、気持ちがなければいいと自分に言い聞かせ、社会人になっても多くの女性と関係を持つ日々を送っていった。

* * *

「本当、俺はどうしようもない最低な男だな」

姫乃が生きていたら幻滅されていたに違いない。

だが、寂しさを埋めるために誰かのぬくもりに触れていく中で、このまま誰のことも愛することなく、ひとりで生きていく人生でもいいと思ったんだ。
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