旦那様の独占欲に火をつけてしまいました～私、契約妻だったはずですが！～

「いいえ。怒りは主人にしか向かなかったわ。どんな思いで芽衣さんをひとりで出産し、ふたりで生きてこられたか……。大変だったでしょう？」

「お母さん……」

涙ぐむお母さんに、涙が頬を伝っていく。

「芽衣さんこそ、私のことを恨んでいないのですか？　この家に来ることに対しても、渋られていたでしょ？　……本当は私なんかと暮らしたくなかったのでは……？　直接言われるのが怖かったの。だったら必要以上に話しかけない方がいい、静かにあなたの幸せを見守っていようと……」

もしかしてお母さんも、私と同じように悩んでいたの？　私に嫌われていると。

「そんなわけないじゃないですか。……感謝しています、私のことを引き取ってくださったことに」

どうして私、もっと早くお母さんとこうして向き合わなかったんだろう。最初に聞かなかったんだろう。

ふたりして泣いていると、お母さんに寄り添うようにお父さんも膝をついた。

「ふたりとも悪かった。元はと言えば、父さんがすべての元凶だ。それに暮らし始めた時に、しっかり家族で話し合うべきだった」

お父さんの目も潤んでいて、胸がいっぱいになる。

するとお兄ちゃんが空気を変えようと、陽気な声で言った。