旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
俊也さんから返信がきたのは、それから二時間後のことだった。

【わかった。できるだけ早く帰る】

電車の中でそのメッセージ文を読み、腹を括った。

いくらでも機会はあったはずなのに、俊也さんが私に姫乃さんの話をしてくれなかったのは、まだ彼の心の中に彼女の存在が大きく残っているからだよね。

それを私が知ってしまった以上、これまでのような関係を築くことなんてできないはず。

だったらもう道はひとつしか残されていない。

店舗周りの途中で市役所に寄り、最後にもう一店舗だけ回って急いでマンションに向かった。



玄関のドアを開けて家の中に入ると、彼の革靴があった。先に帰ってきていたようだ。

一気に緊張がはしる中、リビングに続くドアがゆっくりと開いた。

「お疲れ、芽衣」

スーツ姿の彼が出迎えてくれて、それだけでなぜか泣きそうになる。

「すみません、遅くなってしまって」

涙をこらえて家に上がり、リビングに入った。

「今、コーヒーを淹れたところなんだ」

そう言いながら彼はキッチンで淹れたてのコーヒーをカップに注ぎ、ひとつを私に差し出した。

「飲みながら話そうか」

「……はい」
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