旦那様の独占欲に火をつけてしまいました～私、契約妻だったはずですが！～

どんなに努力しても、夫婦にはなれっこなかったんだ。……彼の心の中を、私で埋め尽くすことは一生できないのだから。

例え俊也さんを諦めずに、姫乃さん以上に愛してもらえるよう頑張っても、報われることはない。
だってどうやったって亡くなった人には勝てないもの。

なんて皮肉めいたことを思いながら、再び歩を進める。

このまま俊也さんと会えない日々を続け、ひとりで考えることで、この先どうしたらいいのか答えが出るのかな。

だって本当はもう答えなんて出ているよね？　どう足掻いても、さっきすれ違った夫婦のような関係にはなれないのだから。

ふと昨日、女性に言われた言葉を思い出した。

『好きな人のそばにいることだけが、幸せとは限りません』

彼女の言う通りなのかも。それに私が家を出て謝罪のメッセージを送ってきた俊也さんも、傷ついているんじゃないかな。

無理して今の関係を続ければ続けるほど、お互い辛いだけなのかもしれない。

再び足を止め、俊也さんにメッセージを送った。

【昨夜はすみませんでした。今夜、話がしたいです。マンションで待っています】

逃げていたって現状はなにひとつ変わらない。返って辛くなるだけな気がする。だったら逃げずに突き進みたい。

スマホをバッグにしまい、次の店舗へ向かった。