旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
優先席に織田先輩に座ってもらい、私は彼女の前に立つ。

するとゆっくりと発車した車内で、彼女は私を見上げた。

「それにしてもびっくりしたな。まさか姫野さんと門脇部長が結婚するなんて。ふたりと一番近くで仕事をしていたはずなのに、全然気づかなかったよ」

「えっと……」

気づかなくて当然です。だって私たち、交際期間を経て結婚を決めたわけではないのですから。……とは言えるはずもなく、言葉に詰まる。

「私ね、門脇部長はどんな人となら本気の恋愛ができるんだろうって、ずっと考えていたの。……その相手が姫野さんだと聞いた時、納得したんだ。だってふたり、すごくお似合いだもの」

満面の笑みで言われ、身体中の熱が上昇してしまう。顔も赤く染まっているであろう私を見て、織田先輩は「フフフ」と笑みを零した。

「お世辞じゃなくて本当よ? 門脇部長って一見軽そうに見えるけど……いや、女性関係に関しては軽い人なのかもしれないけど、実際の彼は違うと思うの。真面目で一生懸命で、誰よりも情熱をもって仕事に当たっている。それになにより、優しい人だと思う」
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