残酷なこの世界は私に愛を教えた



「勉強のし過ぎなんだろ」



横で智久が言う。



「やめろよ。1組の前で何か恥ずいだろ」



「なーに言ってんだか」



俺のことを横目で笑いながらおにぎりにかぶり付く智久。



「どっか受験勉強の息抜きしに行こーぜ」



「はあ? いつ?」



まあ、智久も心底疲れてんだろーなと思う。
こんな見た目してるけど勉強はちゃんとしてるし。



「今週末とか。みんな空いてる?」



智久はマジでその気らしい。



「日曜なら空いてますね」



「大丈夫です」



女子二人が言う。



「だってさ、隼人。お前は?」



「しゃーねーな、行ってやるよ」



「あっ、嬉しいくせにー」



「うるせ」



そんな調子で週末に出掛ける予定がトントン拍子に組まれていく。



「で、どこに行くんですか?」



「そーだなー、どっか行きたいところある?」



そんな風に聞いてみても女子達はいつもの如く黙っているだけな訳で。



「智久はどっかねえの?」



「んー……あっ、前にここ行きたいって思ったんだよね」



そう言って智久が差し出したスマホの画面には……。



「えっ、可愛い! 何処にあるんですか、こんな可愛いカフェ」



お洒落なカフェの画像があった。


思わず「いや可愛いな!」とつっこんでしまいそうになる。
危ない危ない、こいつは可愛いと言われることを嫌がるんだった。



「そう言えばお前甘いもの好きだったよな」



「隼人ほどじゃねえわ」



「で、何処にあんの?」



「えーっと、県内ではあった気がする……あっ、▲▲市だ」



「よし、じゃそこに行くか」



と、こんな感じで四人で出掛けることが決まったのだった。




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